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植物育成灯について
1.植物育成に必要な波長と光質バランス
黄金比は青24:緑32:赤44
植物育成に必要な波長の範囲は、光合成に有効な400〜700nmと、生理的に効果があるとされている300〜800nmの範囲が必要とされています。
また、植物育成に効果的な光質のバランスは、青色光が約24%、緑色光が32%、赤色光が44%とされています。ただし、育成促進を求める場合は赤色光が多い方が、丈夫な植物にするためには青色光が多い方が効果的です。
2.植物育成に必要な光の強さ
1)光飽和点(光合成速度が最大になる光強度)と光補償点。
植物の育成に必要な光強度は、図3によるCO2の吸収などから、光飽和点と光補償点の間で、育成目的や経済性などを検討しながら設定します。
代表的な植物の光飽和点と、補償点は表1を参照して下さい。
表1.各種植物の光飽和点・光補償点
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光飽和点(klx) |
光補償点(klx) |
イネ |
40〜50 |
0.5〜1 |
トマト |
70 |
− |
ナス |
40 |
2 |
キュウリ |
55 |
− |
エンドウ |
40 |
2 |
レタス |
25 |
1.5〜2 |
ミツバ |
20 |
1 |
ブドウ(巨峰)
(デラウェア) |
40 48 |
0.4 0.3 |
モモ(白鳳) |
40 |
0.2 |
ナシ(幸水) |
40 |
0.3 |
オウトウ |
40〜60 |
0.4 |
イチジク(桝井ドーフィン) |
40 |
1 |
セントボーリア |
5〜10 |
0.5 |
シンビジウム |
10 |
0.3 |
シクラメン |
15 |
0.3 |
プリムラ・マラコイデス |
10 |
0.4 |
プリムラ・オブコニカ |
10 |
0.4 |
アザレア |
5 |
0.1 |
3.応用例
植物工場から施設園芸の世界まで、さまざまな場所で人工照明を上手に活用した植物育成がはじまっています。
以下の表は、実際に使用されているケースと試験例を含めた応用例を目的・植物の種類・使用光源・光強度などに分けて示したものです。
1)植物工場
植物工場とは一般的に、光・温度・二酸化炭素などの環境を人為的にコントロール、また潘種や収穫などの自動化により周年生産システムを可能にした施設のことを指します。年に10作〜11作という安全生産や無農薬栽培が出来るなど多くのメリットを持つことから、次世代農業スタイルとして注目されています。植物工場には、建物の中で人工光のみを使用する「完全閉鎖型」とガラス温室などの利用して太陽光と人工光を使用する「太陽併用型」の2種類があります。
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目的 |
作物種類 |
光源 |
光強度(lx) |
完全閉鎖型 |
周年安定生産 |
レタス・サラダナ等 |
HPSL |
20,000〜24,000 |
太陽光併用型 |
周年安定生産 |
レタス・サラダナ等 |
HPSL |
8,000〜10,000 |
2)種苗工場
野菜や花の苗を大量に生産する工場で、成型苗(直接土壌に差し込める苗)の出現により、良質な苗が安定して大量に供給されるようになりました。
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目的 |
作物種類 |
光源 |
光強度(lx) |
完全閉鎖棚型 |
大量安定生産 |
トマト・キウリ等 |
3波長白色FL |
15,000〜22,000 |
2)施設園芸
ビニールハウス、ガラス室などの施設を使って野菜、果樹、草花類などを栽培することで、その規模及び作物の種類は多岐にわたります。人工光を使用する場合は目的や種類に応じて、20lx〜20,000lxと必要な光の強さに大きな幅があるため、適切な光源を選択することが重要です。
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目的 |
作物種類 |
光源 |
光強度(lx) |
電 照 |
開花制御 |
キク |
白熱電球 |
30〜50 |
シャコバサボテン |
白熱電球 |
60以上 |
イチゴ |
白熱電球 |
20〜25 |
その他、リーガース・ベコニア、オオバ等 |
白熱電球 |
20〜25 |
補 光 |
安定生産 |
ミツバ |
HPSL |
5,000 |
パンジー苗 |
HPSL |
1,000〜3,000 |
アニゴザンサス |
HPSL・MHL |
1,000〜3,000 |
花落ち防止 |
アルストロメリア |
MVL・MHL |
1,000〜3,000 |
スイトピー |
HPSL |
10,000以下 |
着色 |
サクランボ・モモ・ブドウ |
MHL |
4,000〜20,000 |
樹勢回復 |
巨峰・デラウェア |
HPSL・MHL・FL |
200 |
バラ |
HPSL |
3,000 |
徒長防止 |
キウリ苗 |
MVL |
1,000〜3,000 |
内成分制御 |
ホウレンソウ |
UV-B・FL |
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4.屋内観賞植物への応用例
農作物の育成だけではなく観賞用の植物の世界でも、必要に応じて人工の光が活用されています。この場合も、閉鎖された空間となっいる建物屋内での使用であるのか、または太陽が射し込み、昼光を利用できるアトリウムでの補光であるのかなど、場所に対する光源を選択する必要があります。
1)屋内:店舗・ホテル・病院(園芸療法補光)・花店(育成維持)など
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目的 |
作物種類 |
光源 |
光強度(lx) |
補 光 |
閉鎖環境 |
観葉植物 |
MHL |
500〜5,000 |
昼光併用 |
花き類等 |
MHL |
5,000〜20,000 |
2)アトリウム
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目的 |
作物種類 |
光源 |
光強度(lx) |
補 光 |
昼光併用 |
観葉植物・花き類等 |
MHL・HPSL |
1,000〜5,000 |
※HPSL:高圧ナトリウムランプ MVL:蛍光水銀ランプ
MHL:メタルハライドランプ FL:蛍光ランプ